Columns list アスボのコラム一覧

多汗症?それとも汗かき?

病的なほど汗をかく「多汗症」の人は意外に多く、人口の約3~5%にも及ぶそうです。
3%という数字は、つまり全世界の人口から換算すると210万人以上もの人が過剰な発汗に
苦しんでいることになります。きちんと疾病として治療を受けておらず、単なる体質として
片付けられている人も少なくありません。

多汗症?それとも汗かき?

  • 多汗症の見分け方

    中には甲状腺などの内分泌疾患や神経の病気があり、その症状のひとつとして多汗症になる
    場合もあります。しかし、ほとんどは原因が特定できない「原発性多汗症」です。
    米国皮膚科学会(American Academy of Dermatology)では、このような病気としての多汗症を
    次のように定義しています。

    ・気温が高い、運動した、などの理由なしに、目に見えるほどの汗をかく
    ・汗の粒がはっきり見える。重症の場合は流れ落ちるほどの汗をかく
    ・汗のために日常生活に支障がある
    ・掌、足の裏、腋、顔、頭など特定の部位に汗をかく
    ・汗をかく部位は、左右対称
    ・寝ている間は汗をかかず、起きると汗がでてくる
    ・週1回以上、汗で困るようなできごとがある
    ・幼少児期~思春期の頃までに発症した
    ・家族に同じ症状の人がいる

  • 治療法の進歩

    標準的な治療は、塩化アルミニウム(制汗剤)を汗の出る部位に塗って発汗を抑える方法です。
    また「イオントフォレーシス」という専用の機器で、手や足に弱い電流を流す治療法もあります。
    どちらも効果がありますが、長続きしないので繰り返し治療することが必要です。
    症状がひどい場合はボツリヌス毒素を注射。これは効果が高く数ヶ月持続しますが、
    健康保険の適用外なので費用が高いことが欠点となるでしょう。
    これら標準的な治療法以外には、次のような治療法が挙げられます。

    ・発汗を制御している胸部交感神経を切断する「ETS(交感神経遮断手術)」
    ・胸部交感神経を一時的に麻痺させる「神経ブロック」
    ・神経伝達物質(アセチルコリン)の作用をおさえる抗コリン薬の内服
    ・自律神経のコントロールを訓練する心理療法
    ・鍼灸などの伝統療法

    ただし、これらについては副作用の心配があったり、十分な効果が証明されていなかったりという理由で
    日本皮膚科学会では推奨していません。しかし最近の海外論文を見ると、抗コリン薬の効果と
    長期的安全性は着実に検証されつつあります。
    例えばオキシブチニン(商品名ポラキス)は、14歳以下の掌または足裏の多汗症患者で大幅な症状の
    改善が認められ、94.9%で生活の質が改善したとの研究結果が発表されています。
    また、グリコピロニウムという喘息やCOPD(慢性閉塞性肺疾患)の治療に使われる抗コリン薬を
    多汗症の治療に使用したところ、副作用が小さく大きな効果をあげたとの研究もあるようです。

    また服薬以外でも、他の目的で開発された医療機器を転用した新しい治療法が成果をあげています。
    例えば、エステサロン等で皮膚の角質除去などの目的で使われている「ジェットピール」という
    機械を利用する治療法です。原理は、極小の水滴を叩きつけて皮膚に薬液を浸透させるもの。
    これを使ってまず麻酔薬を注入した後、ボツリヌス毒素を噴霧するのです。注射と違って痛みもなく、
    狙った範囲に均等に浸透させることができるため、ワキ多汗症の治療で高い効果がありました。

    これらは、まだ日本では健康保険の適用外です。しかし効果が認められれば、将来多汗症の
    標準的な治療法として利用できる日も近いかもしれません。

  • ◆ライター◆

    株式会社 ガリレオ

    <出典>
    Long-Term Efficacy of Oxybutynin for Palmar and Plantar Hyperhidrosis in Children Younger than 14 Years.
    http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25490865

    Efficacy and safety of topical glycopyrrolate in patients with facial hyperhidrosis: a randomized, multicentre, double-blinded, placebo-controlled, split-face study.
    http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24909188

    A preliminary study of painless and effective transdermal botulinum toxin A delivery by jet nebulization for treatment of primary hyperhidrosis
    http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25075176

    <参考>
    American Academy of Dermatology
    https://www.aad.org/dermatology-a-to-z/diseases-and-treatments/e---h/hyperhidrosis
    International Hyperhidrosis Society (IHHS、国際多汗症協会):
    http://www.sweathelp.org/
    原発性局所多汗症診療ガイドライン(日本皮膚科学会)
    https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/guideline/1372913324_3.pdf