アルツハイマー死を予防する「適度な飲酒」の量とは?
アルコール、つまりお酒は脳細胞を損傷させるらしい。しかも、とりたてて大酒のみでなくとも、
赤ワインに換算すると1日にたった2杯程度でも脳細胞の生産率が40%程度低下してしまうそうだ。
マウスを使った実験では、血中アルコール濃度0.08%で記憶を司る海馬の神経細胞の生産効率が4割ほど
ダウンしたという。この程度ではすぐに脳の活動に影響が出ることはないが、毎日飲酒をくりかえせば、
いずれ脳に影響が出るだろうと、この研究を行った米国ラトガース大学のアンダーソン氏は言う。
ところが、デンマーク・コペンハーゲン大学の研究によれば、この説とは相反するような報告がされている。
それは、「適度な飲酒はアルツハイマー病患者の死亡リスクを下げる」というものだ。
それはいったいなぜなのか?また、「適度な飲酒量」とはいったいどのくらいなのだろうか?
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- お酒を通じて楽しみの場を増やす重要性
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コペンハーゲン大学の研究チームは、初期のアルツハイマー病患者321名に対して3年間の追跡調査を
おこなった。患者のうち71%の飲酒量は1日1ユニット以下、17%が2~3ユニット、4%は3ユニット以上、
8%は酒を飲まない人たちである。3年間の調査期間中に321名のうち53名がなんらかの原因で死亡したが、飲酒量別に詳しくみてみると、
1日1ユニット、3ユニット以上、飲まない人たちの死亡リスクに有意差はみられなかった。
これに対し1日2~3ユニットの人たちは他の飲酒量の人たちより死亡リスクが77%も低かったという。研究チームによれば、アルコールの効能よりも、酒の席を楽しみ人と交わる社会的ネットワークを
持つことが、生活の質を向上させ寿命を延ばすのだという。たとえ脳細胞の生産効率が
ダウンしたとしても、人間にとっては酒席の楽しみの方が健康に寄与するということか。
酒は百薬の長、確かにマウスに酒の楽しみはわからないだろう。それでは、QOL(クオリティ・オブ・ライフ)を向上させる「1日2~3ユニット」とは
いったいどのくらいの酒量なのだろうか。
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- 適量のお酒を楽しもう!
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厚生労働省が推進する「健康日本21」によれば、「節度ある適度な飲酒量」とは、純アルコールにして
1日に20g程度であるとしている。いわゆる「ビールなら中ビン1本」、「日本酒にして1合」という
ヤツだ。一方、1ユニットとはアルコール度数(%)÷1000に飲酒量(ml)をかけたもの。ということは、
アルコール度数5%のビールを中ビン1本(500ml)飲んだとすると…5÷1000×500=2.5。
やはりビール1本が健康には適量というわけか。赤ワインならグラスに1~2杯ということになる。徒然草にいう。
「百薬の長とはいへど、よろずの病は酒よりこそ起れ」過ぎたるは及ばざるがごとし、である。
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- ◆ライター◆
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朝倉哲也
日本臨床栄養協会認定サプリメントアドバイザー。
「名医がすすめる最良のサプリメント10種」エクスナレッジのほか、同文書院「サプリメント・健康食品の効き目と安全性」、「サプリメント・健康食品の効き目事典」などを執筆。
小学館「サプリメント健康バイブル2008」制作スタッフ。
雑誌、Webコンテンツなどでも活躍するサプリメント・健康食品のスペシャリスト。ブログ:アンチエイジングのトビラ
著書:名医がすすめる最良のサプリメント10種
<参考>
http://www.nutritio.net/linkdediet/news/FMPro?-db=NEWS.fp5&-Format=detail.htm&kibanID=52352&-lay=lay&-Find
http://medley.life/news/item/555af603e7880cfc0070310f
http://irorio.jp/asteroid-b-612/20121026/33495/
http://www.sapporobeer.jp/tekisei/kenkou/susume.html
http://www.dailymail.co.uk/health/article-2223136/Two-glasses-wine-day-nearly-HALVE-number-brain-cells-produce.html
http://www2.yamanashi-ken.ac.jp/~itoyo/tsuredure/turedure150_199/turedure175.htm