発見! アルツハイマー型認知症の進行を抑える医薬品
2015年1月、厚生労働省は認知症患者の数が2025年には700万人を超えるだろう、との推計を発表した。
認知症患者は急速に増加しており、2012年の462万人からわずか10年ほどで1.5倍にも増える見通しだ。
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- 認知症を改善する方法はある?
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認知症の主な原因は、脳梗塞など脳血管性の認知症と、脳神経細胞に変性が起きるレビー小体型認知症が
共に約20%を占め、残りの60%近くがアルツハイマー病だ。
アルツハイマー病は、脳に異常なたんぱく質が蓄積して脳細胞が変性したり、脱落したりする病気で、
詳しい原因も決定的な治療法もみつかっていない。しかし、つい最近、国立長寿医療研究センター、理化学研究所、同志社大学の共同研究チームが
アルツハイマー病の進行を抑える化合物を発見したと発表した。しかも、その化合物は身近にある
医薬品だという。その化合物は、果たしてアルツハイマー病患者の救世主となりえるのだろうか。長い間、アルツハイマー病はβアミロイドと呼ばれるたんぱく質が凝集して脳神経細胞を死滅させるために
起こると考えられてきた。しかし、1990年代以降、数多くの研究者がβアミロイドを除去する治療を
研究してきたが、認知症の進行を食い止めることはできなかった。一方で、神経細胞の骨組みを支えているタウたんぱく質が過剰に発現して、神経細胞が
崩壊してしまう現象が、認知症患者の脳の前方部分でみられることが知られている。
神経原線維化と呼ばれるこの現象が、実は脳の一部にとどまらず脳全体へと広がることが解ってきた。
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- 新薬が持つ可能性に期待
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現在、アルツハイマー病の主な原因は、βアミロイドとタウたんぱく質の蓄積による神経細胞の変性や
脱落によるものとされている。アルツハイマー病は症状が出始めるはるか以前から20年以上かけて
ゆっくりと進行するが、アルツハイマー病と診断されてからの平均生存率は8年と、
症状が重くなるにつれて進行は早まる。今回、研究チームはタウたんぱくに結合して、凝集するのを防ぐ化合物を探していたが、
最終的にカテコール化合物がタウたんぱくに結合し、凝集しないように作用することが判明した。
このカテコール化合物のうち、イソプロテレノールをモデルマウスに投与したところ、
タウたんぱくの凝集量が減少し、神経細胞の脱落による脳機能の低下が改善した。イソプロテレノールは心拍数が低下する除脈が起きたときに、心拍数を増加させる心不全の薬で、
気管支を拡張する作用もあるため気管支炎の薬としても使用される。今後はヒト臨床試験を経て、
2025年には認知症治療薬として認可されることを目標に開発が進められる予定だ。果たしてこの新薬は、2025年に700万人を超えると予測される認知症の増加に歯止めを
かけられるだろうか。世界中に希望をもたらす研究であり、早期の実用化に期待したい。
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- ◆ライター◆
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朝倉哲也
日本臨床栄養協会認定サプリメントアドバイザー。
「名医がすすめる最良のサプリメント10種」エクスナレッジのほか、同文書院「サプリメント・健康食品の効き目と安全性」、「サプリメント・健康食品の効き目事典」などを執筆。
小学館「サプリメント健康バイブル2008」制作スタッフ。
雑誌、Webコンテンツなどでも活躍するサプリメント・健康食品のスペシャリスト。ブログ:アンチエイジングのトビラ
著書:名医がすすめる最良のサプリメント10種<参考>http://www.huffingtonpost.jp/science-portal/dementia-medical_b_8836082.html
https://info.ninchisho.net/archives/2666
https://bsd.neuroinf.jp/wiki/%E3%82%A2%E3%83%9F%E3%83%AD%E3%82%A4%E3%83%89%CE%B2%E3%82%BF%E3%83%B3%E3%83%91%E3%82%AF%E8%B3%AA
http://www.keiro.org/document.doc?id=672
http://www.interq.or.jp/ox/dwm/se/se21/se2119002.html